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情報発信者という仕事をしてみて

 

「きんまん21歳春」

きんまんは22歳のときに情報発信を始めた。

はじめの8ヶ月間。彼は好きなことを書いた。

この国の経済のこと。
政治のこと。
歴史の引用。

己の教養をひけらかすようにして、
有名人に絡みにいき、
いたずらにTwitterで引用リツイートをしていた。

今の彼ならば決してしないことを
平気な顔をして行っていた。

もっぱらTwitterを触るのは電車の中。

バイト帰りの疲れた体を押してである。

そんなある日。

ふと彼の目に情報が飛び込んできた。

年の頃はひとつふたつ下。

軽薄ながらも先に情報発信で成功した男である。

彼は立命館大学を休学中であった。

すぐさま会いに行った。

彼は顔が長く顎が出ていて油断ならなそうな目をしていた。

ここでは彼のことをCと呼ぶことにする。

Cは先輩として彼にこういった。

「きんまんさん。若いんですね。そのアイコンはだめですよ。もっと視聴者目線にならないと。」

…そのころの彼はおじいさんのアイコンを使っていた。

きんまんはなんの気なしに当時好きだった千利休の画像を使っていた。

ーーーなるほど視聴者目線…か。好きなこと書いてちゃだめだな。

と彼はこの一事で学んだ。

それから彼はこれまで分散していた発信のテーマをそろえることにした。

名もないイチ大学生のご意見番なんて、誰も興味はないのだ。

だから当時珍しかったジャンルの占いに絞ることにした。

すると、彼のフォロワーは1ヶ月に10人や20人と行ったペースでゆっくりとだが着実に増えていった。

だが、この時彼を不幸が襲った。

彼には愛らしい恋人がいた。

垢バレしたのである。

恋人はあやかと言った。

そのあやかが発信を見て、発狂したのである。

「あやか18歳夏」

あやかが彼のスマホを覗き見てみると、彼のアカウントには赤裸々に日常が書いてあった。

大半は難解な内容だったが、その中に見過ごせないものがあった。

ナンパの記録である。

ホーム横に座る女の子に声をかけることができなかったことが書いてあった。

無残にも最後の最後でホテルインに失敗したことが書いてあった。

ナンパが上手く行って調子づき始め、全女性を敵に回すようなことが書いてあった。

あやかは発狂をした。

それまであやかは恋人を理想的な年上の男だと思っていた。

18歳のときに知り合った彼。

きっかけは道を聞かれたことであった。

怪しいとは思ったが彼の真剣さや真摯さに惹かれて目を瞑っていた。

会社の同僚や友人に何を言われようと、ナンパではない!と被っていた。

それなのに、それなのにも関わらず自分の恋人は堂々と全世界に向けてナンパの成果を報告していた。

あやかは恋人に疑念を持ち始めた。

「きんまん22歳冬」

恋人にTwitterがバレたきんまんは、すぐさまアカウントを消した。

そして今度はビジネス向けのアカウントとして再起を図ろうとした。

今度は慎重に。

スマートフォンからTwitterのアプリは消した。

そしてパソコンからTwitterを更新し始めた。

だが、しかし。

再起したアカウントでも依然としてフォロワーは伸びなかった。

フォロワーの数字も80人止まりである。

毎日増えたり減ったりしていた。

占いについての知見や意見など、誰も興味を持たなかった。

当時彼の目の付け所は良かったのだが、時代を先取りしすぎていた。

そこで彼はTwitterの方向性を変えた。

ガンガン売上は出すし、過去付き合っていたナンパ師たちとも交流を始めた。

ーーー時代が占いに追いついて来ないなら、今時代が来つつある界隈に乗っかって、時流を作ればいい。

そう彼は戦略を作った。

彼の戦略は見事にあたり、
その後占い師たちの活躍は目を見張るものがある。